12.6 水素ガス吸引は複数菌感染による敗血症を予防

学術雑誌名:Shock , 2010 Jul.; 34(1), 90-97

表題:Protective effects of hydrogen gas on murine polymicrobial sepsis via reducing oxidative stress and HMGB1 releaase(水素ガスは酸化ストレス並びにHMGB1放出の抑制によりマウスの複数菌感染による敗血症に対し予防効果を示す)

著者:Keliang Xie et al(天津医大他)

概要:最近の抗菌剤による治療法の進歩にもかかわらず敗血症は集中治療室での治療において最も普遍的な死因である。敗血症の病因には過剰な活性酸素産物(ROS)が重要な役割をしている。近年、分子水素(H2)が最も細胞毒性の高いヒドロキシラジカル(・OH)を選択的に還元して抗酸化作用による治療効果をしめし、虚血再環流による臓器傷害を防止することも分かってきた。したがってH2は敗血症に対しても有効な治療法になることが期待できる。本研究ではマウスの盲腸結さつと穿刺(CLP)後1及び6時間後にH2吸引療法を施した結果敗血症による生存率が水素の濃度および処置時間に依存して有意に改善することが分かった。さらに、適度なあるいは過酷なCLP処置24時間後に発症する敗血症では肺の酵素のmyeloperoxidase活性の増加、気管支肺胞の湿・乾燥比、及びたんぱく濃度、血清生化学マーカー、病理組織スコアの増加等が認められ有意な多臓器障害が生じるが2%の水素ガス吸引処置によって症状は有意に改善された。さらに水素ガス吸引による敗血症と多臓器障害に対する効果は血清や組織中のRCSの減少、抗酸化酵素の上昇及びHMBG1レベルの減少に拠っていることが分かった。このように水素ガス吸引法は敗血症患者の有効な治療法になることが期待される。

カテゴリー: 12. その他の酸化ストレスに関連する疾患:延命作用、腸内細菌、視聴障害、精子機能等   パーマリンク

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