3.2.3水素溶解食塩水がラット小腸の虚血再灌流傷害で生じる小腸の構造的変化を予防

学術雑誌名:J. Sur. Res., Vol.167, 2, P316-322, 15May 2011

表題:The effects of hydrogen-rich saline on the contractile and structural changes of  intestine induced by ischemia-reperfusion in rat(水素溶解食塩水がラットの腸虚血再灌流によって生じる小腸の収縮性及び構造的変化に対する効果)

著者:Han Chen et al.(上海第二軍医大ほか)

概要
方法:分子水素が新たな抗酸化物質として種々の臓器において虚血再灌流(I/R)傷害を予防することが報告されている。本研究では、KClに対する小腸平滑筋収縮反応並びに小腸虚血再灌流傷害における上皮細胞の増殖促進作用およびアポトーシスに対する水素溶解生理食塩水の作用を検討した。SDラットを用いて腸虚血再灌流傷害のモデルを作成した。ラットを次の4群に分けて水素の効果を検討した①偽手術群、②虚血再環流群、③虚血再環流+生理食塩水群、④虚血再環流+水素豊富生理食塩水群。虚血は45分行い、再環流の30分前に尾静脈より食塩水を投与処置した。水素豊富生理食塩水は(>0.6mM,6ml/kg)を生理食塩水は(5ml/kg)をそれぞれ投与した。虚血再環流後空腸のサンプルを切除しKClに対する平滑筋収縮反応を検討した。合わせて活性酸素産物であるマロンジアルデヒドと酵素のmyeloperoxidase活性を測定した。小腸上皮細胞のアポトーシスはTUNEL法によった。細胞増殖促進作用は免疫法によって細胞核抗原のPCNAを調べた。

結果:水素豊富生理食塩水処理によって小腸の虚血再灌流(I/R)傷害は有意に改善され、アポトシスの阻害と腸細胞の増殖が認められた。合わせて好中球の浸潤や脂質酸化が抑えられ、KClに対する小腸平滑筋収縮反応も軽減した。これらの結果は水素豊富生理食塩水が小腸の虚血再環流による小腸の収縮不全や障害を抑制する作用があることを示した。この水素の防御作用は虚血再環流による酸化ストレス並びにアポトシスの抑制及び上皮細胞の増殖促進作用によるものと考えられる。

カテゴリー: 3. 消化器疾患関連:腸疾患、肝臓病、膵臓病等, 3.2 腸疾患   パーマリンク

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