7.8 水素補強水の飲水はラットの心臓同種移植片の劣化を防ぐ

学術雑誌名:Transplant Int., Vol.25, No.12, P1213~1222, 2012, doi:10.1111/j.1432-2277.2012.01542.x.

表題:Hydrogen-supplemented drinking water protects cardiacallografts from inflammation-associated deterioration(水素補強水の飲水により炎症に起因する心臓同種移植片の劣化が保護される)

著者: Noda,K. et al(ピーツバーグ大, 兵庫医大)

概要
分子水素は炎症に関連する疾患に対して治療効果があることが示唆されている。本報ではラットの移植手術後水素水を連日投与することにより臓器受容側ラットの移植片が保護されるとの仮説で研究を実施した。ラットを用いタクロリムスにより短期間免疫抑制しながら異所性の心臓移植と同所性の動脈移植を実施した。①水素ガスを水道水に吹き込んだ水の群(Bu-HW)、②水道水にMgスティックを加えて水素ガスを発生させた水の群(Mg-Hw)、③通常の水道水の群(RW)、④Mgスティックで水素ガスを発生した後水素ガスを脱気して除いた水の群(DW)の4群を設けて水素の効果を比較検討した。移植片の生存は毎日心拍を触診することによって確認した。その結果、Bu-HW群とMg-Hw群ではRWとDW群に比べて明らかに移植心の生存率の延長並びに移植動脈の血管内膜過形成が抑制された。さらに、試験管内試験ではT細胞増殖が抑制され、結果としてインターロイキン-2、インターフェロン-γ産生が減少した。水素処理に寄りは移植片のATPレベルが上昇し、ミトコンドリアの呼吸鎖の酵素活性が上がる。以上の結果から、水素水の飲水により心増殖片の生存率が上昇し動脈移植片の内膜過形成も抑制されることが明らかになった。

・背景 水素ガス吸引は抗酸化と抗炎症作用によりラット腸の移植に有効である。本報ではドナーの組織を水素水処理すると小腸移植片 の傷害を防ぐか否か検討する。

・方法 同系異種ラットを用いて小腸の同所移植を行った。臓器摘出後保存条件を窒素ガス吹き込み液と水素ガス吹き込み液で冷温保存した後水素ガスの効果を窒素ガスと比較検討した。

・結果 虚血―再環流傷害の初期相では水素補強液によって明らかに粘膜移植片の形態は保持され、再環流移植片中の還元力を示すマロンジアルデヒド量の低下、さらには炎症関連分子の軽減が認められた。再還流の後期相でも炎症性分子や関連酵素の低下、移植組織機能の改善が見られた。また、移植片の生存率も41%から80%に上昇した。水素処理移植片筋層の抗炎症作用、抗アポトーシス酵素のheme-oxigenase-1は有意に上昇した。

・結論 ラットの移植腸移植片を水素水処理することにより、形態的にも、機能的にも改善され移植片の生存率も上昇した。水素の抗酸化作用と筋層のheme-oxygenase-1の増加がその作用機作と考えられた。

カテゴリー: 7. 臓器移植、心、肺、腎、腸等, Transplantation   パーマリンク

コメントは受け付けていません。