学術雑誌名:Current. Pharm. Design, 2011, 17, in press
表題:Recent Progress Toward Hydrogen Medicine: Potential of Molecular Hydrogen for Preventive and Therapeutic Application(訳:水素医学の最近の進歩:分子水素の予防及び治療応用の将来性)
著者:S. Ohta (日本医科大学)
概要:持続的な酸化ストレスは多くの生活習慣病や、ガン、老化の主因の一つである。また、急性の酸化ストレスは組織に重篤な障害を与える。酸化障害は臨床的にも重要であるにもかかわらず抗酸化剤の臨床応用は限られていた。
筆者らは分子水素(H2)が新たな抗酸化剤として予防、治療用途として有用である事を始めて提唱した(Osawa et al., Nature Med., 2007: 13,688-94)。
H2は有用な抗酸化剤として多くの利点を有している。すなわち、速やかに組織や細胞に拡散できるし、有用な酸化還元反応のみならず細胞情報に必要な反応性活性酸素種を妨害しないので副作用がほとんど認められない。
水素の摂取方法としては水素水の飲水、水素ガスの吸引、水素溶解生理食塩水の注射、点眼剤、腸内水素精製バクテリアへの作用、さらには水素水浴等が可能である。
上述の筆者らの最初の発表以来代表的な学術誌に38以上の疾患、生理的機能、臨床試験などの報告がされており、抗アレルギー作用についての報告をしているグループもある。
H2は多くの遺伝子発現ならびにたんぱくのリン酸化を制御していることが明らかになってきたが、極めて低濃度でも顕著な効果があるという報告に関する作用機構については未解決の点もある。これらに関する最新の研究報告が概説されている。