10.1.6 水素の新たな標的分子:水素(H2)は情報伝達系の分子の作用を調整して新たな作用を発現する

学術雑誌名:Biochem. Biophys. Res. Comm., 411(2011) 143-149

表題:Molecular hydrogen inhibits lipopolysaccaride/interferon γ-induced nitric oxide production through modulation of signal transduction in macrophages(訳:分子水素はマクロファージの情報伝達系を調整する事によってLPS/インターフェロンγで誘導される一酸化窒素(NO)産生を阻害)

著者:T.Itoh et al.(岐阜国際バイオ研究所、近畿大学、中部大学、名古屋大学他)

概要:これまで分子水素(H2)が多くの疾患に有用である事が報告されている。その作用機作としては多くは酸化ストレスの抑制作用として説明されてきたがそれだけでは説明できない事例も認められている。

著者らは水素の抗アレルギー作用を最初に報告したが本研究ではそれを発展させて水素の新たな標的分子としてのシグナル伝達に関与する分子とその調整作用について報告している。分子水素の新たな作用メカニズムに関する最初の報告である。

水素は、マクロファージ細胞においてLPS/インターフェロンγで誘導されるNO生成を阻害するが、その作用はNOの誘導性合成酵素の阻害によるもので、酸化ストレスに関与する反応性酸素種(ROS)の抑制には関わらない。

これらの結果から、分子水素はシグナル伝達に関連する因子の調整作用を介して作用する事を分子レベルで明らかにした。

さらに、これらの結果を元にヒトのリューマチのモデル動物の一つである2型コラーゲンで誘発されるマウスの足炎症に対して経口的に水素水を投与してその炎症を軽減する事を明らかにした。分子レベルから動物モデルまで一貫して水素の新たな作用機作を提唱している。

カテゴリー: 10. 水素の医療応用, 10.1.作用メカニズムに関する研究, BIochem.Biophys.Res.Comm., 中部大学, 名古屋大学医学部, 岐阜国際バイオテク研究所, 抑制作用, 水素, 研究機関, 近畿大学   パーマリンク

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