10.2.8 予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性

学術雑誌名:Pharmacology&Therapeutics(2014),http://dx.doi.org/10.1016/j.pharmathera.2014.04.006

表題:Molecular hydrogen as a preventive and therapeutic medical gas : initiation, development and potential of hydrogen medicine(訳:予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性)

著者:S. Ohta (日本医大)

概要:分子水素(H2)の医療応用研究の第一人者である著者が当該分野の研究、応用の最新状況についてその歴史と現状について紹介している。分子水素は体内では不活性な分子と考えられていたが著者らの研究により初めて生体内で・OHのような強い活性酸素と反応してその傷害作用を軽減することが発見され、水素の予防医学、治療応用の研究が近年急速に発展してきた。水素は既存の抗酸化剤に比べて極めて特徴的な利点を有している。すなわち、水素は速やかに組織や細胞に入り、正常な酸化還元反応に影響することなく傷害性の活性酸素種を還元するのでほとんど副作用がない。さらには、ガスとして吸引、水素水として飲水、水素水―生理食塩水の注射、水素温浴、目の点眼剤等その投与法が広く優れた利点がある。また、活性酸素種と直接反応するとともに遺伝子発現への作用を介する間接的な作用も報告されている。遺伝子制御を介して抗炎症作用、抗―アトポーシス作用、エネルギー代謝の促進作用等が認められている。モデル動物を用いた試験、臨床研究等が広範囲に展開されている。この様に多くの既存薬が標的分子に限って作用するのと比べて水素はそれらとは違って、優れた効果とともに副作用がないことから多くの疾患に対して医療応用への可能性と期待が高まっている。

カテゴリー: 10.2.医療応用に関する総説, Pharmacology&Therapeutics   パーマリンク

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