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カテゴリー別アーカイブ: 2. 神経変性疾患、筋疾患: 認知症、パーキンソン病、進行性筋ジストロフィー他
2.5.1 分子水素は神経性疼痛を軽減
学術雑誌名:PLOS one 2014 ; 9(6) : e100352 表題:Molecular hydrogen attenuates neuropathic pain in mice(分子水素はマウスの神経障害性疼痛を軽減する) 著者:Masato Kawaguchi et al.(防衛医大、テキサス医学部) 概要:神経障害性疼痛は難治性であり、新たな治療法が切望されている。その病因は過剰な酸化ストレスが要因となっている。しかしながら、抗酸化剤を腹腔内や髄腔内に継続的に投与することは臨床的には困難である。本報告では水素豊富水の飲水による効果を検討した。マウスの坐骨神経を部分的に結紮して病態モデルを作成し結紮後3週間水素水を飲水させ機械的な異痛や熱性痛覚過敏痛をvon Frey法とplantar testにより観察した。水素水は飽和濃度レベルの物を自由摂取させた結果症状は改善された。水素水投与により発症誘導期(結紮後0~4日)では両症状とも改善されたが維持期(4~21日)では熱性痛覚過敏痛は軽減したが機械的な異痛は軽減されなかった。また、免疫組織学的に酸化ストレスマーカーを測定した結果結紮によって起こる酸化ストレスは減少することが明らかになった。これらの結果から水素水の飲水は神経障害性疼痛に対し臨床的にも有用であることが示唆された。
カテゴリー: 2.5 神経障害性疼痛, PLoS one
2.2.5 水素水のパーキンソン病に対するパイロット臨床試験:無作為化平行群間試験
学術雑誌名:Movement Disorders, Vol. 28, No.6, 836(2013). 表題:Pilot Study of H2 Therapy in Parkinson’s Disease: A randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial(パーキンソン病に対する水素療法のパイロット試験) 著者:A.Yoritake et al(順天堂大医学部) 概要:パーキンソン病の進行に酸化ストレスが関与していることが知られており、これまでに各種のモデル動物試験において水素飲水が病状の悪化を抑制することが多く報告されている。本試験においてはL-dopa治療を受けている男女患者(平均年齢:約62歳)17人を対象に水素水飲水群9人(溶存水素濃度:0.8mM,1000ml/日)とプラセボ群8人にわけて無作為化並行群間試験法により試験を実施した。臨床評価はUPDRSスコア法に依った。患者は少人数のパイロット試験ではあったがスコアの減少度において両者間には有意な差が認められ水素飲水が動物実験で得られた結果と同じように病状の進行を抑制する有効な作用があることが認められた。
2.3.10 水素豊富水は一酸化炭素中毒ラットの免疫学的作用による急性脳障害を軽減
学術雑誌名:Neurolog. Res. 2012, vol. 34, no.10, 1007 表題:Hydrogen rich saline reduces immune-mediated brain injury in rats with acute carbon monoxide poisoning.(水素豊富水投与により免疫学的機作で起こるラットの一酸化炭素中毒による脳障害が軽減される) 著者:Wang, W. et al.(第4軍医大、中国) 概要:SD系ラットを一酸化炭素暴露すると免疫学的作用を介して急性の脳神経障害が発症する。神経、小グリア細胞、ミエリン鞘の変性が観察され、また、マクロファージ浸潤や免疫に関連するcytokainのMP-1-α、ICAM-1が変動し、あわせてミエリンタンパク(MBP)が変化する。本症に対する水素豊富水の投与効果を検討した。神経組織の変性を組織病理学的および免疫組織学的検査、抗酸化機能を抗酸化酵素SODおよび血清中マロンジアルデヒドの測定により評価した。水素豊富水は生理食塩水にH2ガスを吹き込んで作成し、腹腔内投与した。水素豊富水投与により上記諸測定値は有意に改善され、分子水素がラットの一酸化炭素暴露によって生じる免疫学的作用を介した脳神経障害を軽減することが分かった。
2.3.9 分子水素はマウスの神経性疼痛を軽減する
学術雑誌名:Plos One,June 2014,Vol. 9, I ssue 6, e100352(電子版) 表題:Molecular hydrogen Attenuate Neuropathic Pain in Mice.(分子水素はマウスの神経性疼痛を軽減する) 著者:Kawaguchi M. et al.(防衛医大) 概要:神経性疼痛は難治性であり早急に新たな治療法の開発が望まれている。近年、酸化ストレスの過剰生産がこの疾患の病因のキーとなっていることが明らかになってきた。しかしながら、不適切な抗酸化物質を腹腔内やくも膜下に継続して投与することは実用上困難である。本研究ではマウスの坐骨神経結紮によって起こる疼痛モデルを用いて飽和レベルの水素水を3週間自由に飲水させることによって分子水素水の神経性疼痛に対する効果を検討した。機械的な異痛および痛覚過敏を指標として測定した結果両指標は明らかに軽減された。結紮初期(0~4日)に水素水を与えた場合は両指標とも改善されたが維持期(4~21日)のみに与えた場合痛覚過敏は改善されたが異痛には効果はなかった。また、免疫学的病理解析において酸化ストレスマーカーは低下した。これらの結果から水素水投与は臨床的にも神経性疼痛に対する改善作用が期待されることが示唆された。
カテゴリー: 2.3 その他の神経疾患
2.1.4 水素豊富水は敗血症ラットの酸化ストレス、認知能、生存率を回復する
学術雑誌名:J. Surg. Res., 178(2012) 390-400 表題:Hydrogen-rich saline reverses oxidative stress, cognitive impairment, and mortality in rats submitted to sepsis by cecal ligation and puncture(水素豊富水は盲腸結紮および穿刺で起こる敗血症ラットの酸化ストレス、認知能、および生存率を回復する) 著者:Zhou, J. et al (Luzhou医科大他) 概要:敗血症は高い罹患率と致死率を伴い、生存者は認知機能低下を呈する。本報では水素豊富水の脳における酸化ストレス、認知機能異常、および生存率に対する効果をラット敗血症モデルを用いて検討した。敗血症は盲腸の結紮と穿刺によって作成し、生理食塩水または水素豊富生理食塩水を腹腔投与によって与え、その効果を比較した。活性酸素生成物、生存率、および海馬におけるSOD生成を測定した。認知能はモリス水迷路法によって判定した。さらに、アポトーシス能は関連酵素Caspase-3活性で調べた。海馬の病理組織的変化についてはHE染色法等によって検討した。 これらの結果から、水素豊富生理食塩水投与により敗血症で誘導された脳の酸化ストレスは抑制されて記憶機能低下を改善し生存率も上昇することが明らかになった。
カテゴリー: 2.1 認知症・アルツハイマー病, J. Surg. Res.
2.3.8 分子水素は神経変性疾患などの新規医療用ガスとして有用
学術雑誌名:Oxid. Med. Cell Longev. 2012; 2012:353152. Doi: 1155/2012/353152. Equb 2012 Jun 8. 表題:Molecular hydrogen as an emerging therapeutic medical gas for neurodegenerative and other diseases.(分子水素は神経変性疾患や他の疾患の新たな医療用ガス) 著者:Ohno K. et al.(名古屋大) 概要:この4年半の間に分子水素の多くの疾患に対する有効性が63の疾患モデルとヒト疾患で報告されている。多くの報告が2つのパーキンソン病モデル及び3つのアルツハイマー病モデルで検討されてきた。特に、酸化ストレスを起因とする疾患である新生児脳虚血、パーキンソン病、脳、心、肺、腎臓や腸の虚血・再環流、臓器移植などで優れた効果が認められている。今日まで6つのヒト疾患に対する臨床効果がが報告されている(2型糖尿病、メタボリック症候群、透析、炎症・ミトコンドリア筋炎、脳幹梗塞、放射線副作用)。しかしながら、2つの解決されるべき重要な課題が残っている。1つは投与量依存性が認められないこと、2つ目は腸内のバクテリアが大量の水素を産生しているにも拘わらず少量の水素投与によって顕著な効果が認められることである。今後さらに分子レベルでの作用の解明と臨床レベルにおける最適投与量を研究が期待される。
カテゴリー: 2.3 その他の神経疾患, Oxid. Med. Cell. Longev
2.3.7 水素豊富生理食塩水は敗血症の酸化ストレス、認知障害と死亡率を改善
学術雑誌名:J. Surg. Res. 2012 Nov; 178(1): 390-400 表題:Hydrogen-rich saline reverses oxidative stress, cognitive impairment, and mortality in rats submitted to sepsis by cecal ligation and puncture.(水素豊富生理食塩盲腸結紮と穿刺で発症させたラットの酸化ストレス、認知障害、死亡率を改善する) 著者:Zhou J. et al.(Luzhou Med. College) 概要:敗血症は高い罹患率と死亡率を招き、生存者は認知障害を起こす。ラットの敗血症モデルを用いて水素豊富水が酸化ストレスの軽減を介してこのような傷害を防止できるか検討した。ラットの盲腸の結紮と穿刺によって敗血症モデルを作成し、水素豊富食塩水を腹腔内投与した。酸化ストレスマーカーの測定、病理組織学的評価、並びに認知能をモリス迷路法で調べた。その結果、酸化ストレスマーカーであるROS,malondialdehyde の低下の抑制、抗酸化酵素のSODの上昇等の有意な回復が認められ、水素水が抗酸化能の改善を介して敗血症による認知障害を回復する作用があることがみとめられた。
カテゴリー: 2.3 その他の神経疾患, J. Surg. Res.
2.3.6水素豊富水は外傷性の脳障害の認知機能を防護する
学術雑誌名:Brain Res. Bull., 2012 Sep 1; 88(6): 560-5 表題:Hydrogen –rich saline protects against oxidative damage and cognitive deficits after mild traumatic brain injury(水素豊富水は軽度の外傷性脳傷害後の酸化障害と認知欠損を防護する) 著者:Hau Z. et al.(Beijing Neur. Inst., Capital Medical Univ.) 概要: 酸化ストレスは外傷性脳傷害(TBI)で惹起される長期にわたる神経不全や再形成の主要な要因である。抗酸化剤は酸化的障害から脳を守り、シナプス機能不全や認知障害から脳の回復機能を助成する作用があることは重要である。しかしながら、水素豊富生理食塩水がTBI後の認知機能に対する効果に関する研究はこれまではなかった。本研究では、体液衝撃傷害(FPI)を施したラットを用いて水素豊富生理食塩水の防御効果を検討した。その結果水素豊富生理食塩水は酸化ストレスによって生じるmalondialdehyde(MDA)レベルを軽減し、silent information regulator 2(Sir 2)レベルを上昇させた。さらに、水素豊富生理食塩水投与によって脳の神経増殖因子によって回復するシナプスの可塑性を上げ、さらにモリス水迷路法による認知機能障害試験においても認知機能が改善した。これらの結果は、水素豊富生理食塩水はラットの軽度のTBIにおいて脳神経シナプスの可塑性や認知機能を防御することが明らかになり、ヒトの臨床においても有用な手段になりうることを示唆している。
カテゴリー: 2.3 その他の神経疾患, Brain Res.
2.3.5 水素水は自閉症に有効か?
学術雑誌名:Med. Gas Res.., 2012, 2:19 doi:1186/2045-9912-2-19 表題:Physical exercise and intermittent administration of lactulose may improve autism symptoms through hydrogen production.(運動と間欠的ラクツロースの投与により水素の産生を介して自閉症症状が改善される) 著者:A. Ghanizadeh.(Shiraz大医科学、Iran) 概要 イランの学童のスクリーニング調査では約1.9%が自閉症の評価基準に該当する。自閉症は神経発達の不全によるものである。自閉症に罹患している子どもには酸化ストレスが亢進している者が多くみられる。分子水素は抗酸化作用を介して多くの疾患の治療や予防に有効であることが報告されている。人工的合成糖であるラクツロースは腸内で代謝を受けず、腸内細菌に作用して水素ガスを産生することが知られており、このラクツロースや水素水の投与によって自閉症の酸化ストレスを軽減する分子水素を供与できることから本症に対する有用性が期待される。
2.3.4水素水は一酸化炭素中毒で起こる神経障害を軽減
学術雑誌名:Crit. Care Med., 2011 Apr.; 39(4):765-9 表題:Hydrogen –rich saline reduces delayed neurologic sequence in experimental carbon monoxide toxicity.(水素豊富水はラットの一酸化炭素中毒で起こる遅発型神経障害を軽減する) 著者:Q. Sun et al.(上海第二軍事大) 概要:本研究では重篤な急性一酸化炭素(CO)中毒による遅発性の脳神経障害に対する水素水(H2)の腹腔内投与による効果を検討した。成獣ラットに1000 ppm COを含む空気を40分間、さらに3000 pppmを20分間与えて昏睡させた。水素豊富生理食塩水と通常の食塩水(10ml/kg)をそれぞれ蘇生後に0, 12, 24, 36, 48, 60時間後に計6回投与して2群間で水素の効果を比較した。脳組織の炎症度、細胞死、認知機能障害を中毒処置1週間後に調べて評価した。その結果水素豊富食塩水は通常の生理食塩水に比較して生化学的、組織化学的評価並びに水迷路法による認知行動機能を改善することが認められた。これらの結果から水素含有生理食塩水は重篤なCO中毒による遅発性の神経障害患者に対して新たな代替療法となりうる可能性が示唆された。その効果は抗酸化、抗炎症作用によるものと推察される。