カテゴリー別アーカイブ: 10. 水素の医療応用

10.2.9 分子水素の有益な生物学的効果と基本的作用機作:321の文献の包括的紹介

学術雑誌:Med. Gas Res. (2015)5:12;DOI 10.1186/s13618-15-0035-1 表題: Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen-comprehensive review of 321 original articles- 著者:M. Ichihara (名古屋大他) 概要:2007年以来広範な疾患動物モデルやヒトでの臨床試験において分子水素の治療効果が研究されてきた。2007年から2015年6月までに計321の原著論文が発表されている。主たる研究は日本、中国、米国でなされた。約3/4の文献がマウスおよびラットで有効性が示されている。さらに、臨床試験の数も毎年増加している。多くの疾患例において水素の効果は水素水あるいは水素ガスで報告され、水素豊富生理食塩水でも確認されている。水素水は多くの場合任意に与えられ、水素ガスは4%以下のガス吸引で投与されている。その効果は31疾患に分類され、さらに166に細分類される疾患のモデル動物およびヒト疾患、治療関連病理、および酸化ストレスに起因する病態および炎症症状の植物の病理生理学的分析において基本的な有効性が報告されている。それらの作用は初期にはヒドロキシラジカルやペルオキシ亜硝酸の特異的な消去が認められるがその顕著な効果は単に活性酸素分子の消去作用だけでは説明できない。我々および他の研究者もその効果はLyn, ERK, p38,JNK, ASK1等のような多くの疾患関連分子の活性や発現を調節することによって発揮されていることを示した。水素の主たる作用機作はこのような分子の調節作用によると考えられるが、今後さらなる研究が必要であり、現在多くの研究者により広く精力的な研究がおこなわれている。

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10.2.8 予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性

学術雑誌名:Pharmacology&Therapeutics(2014),http://dx.doi.org/10.1016/j.pharmathera.2014.04.006 表題:Molecular hydrogen as a preventive and therapeutic medical gas : initiation, development and potential of hydrogen medicine(訳:予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性) 著者:S. Ohta (日本医大) 概要:分子水素(H2)の医療応用研究の第一人者である著者が当該分野の研究、応用の最新状況についてその歴史と現状について紹介している。分子水素は体内では不活性な分子と考えられていたが著者らの研究により初めて生体内で・OHのような強い活性酸素と反応してその傷害作用を軽減することが発見され、水素の予防医学、治療応用の研究が近年急速に発展してきた。水素は既存の抗酸化剤に比べて極めて特徴的な利点を有している。すなわち、水素は速やかに組織や細胞に入り、正常な酸化還元反応に影響することなく傷害性の活性酸素種を還元するのでほとんど副作用がない。さらには、ガスとして吸引、水素水として飲水、水素水―生理食塩水の注射、水素温浴、目の点眼剤等その投与法が広く優れた利点がある。また、活性酸素種と直接反応するとともに遺伝子発現への作用を介する間接的な作用も報告されている。遺伝子制御を介して抗炎症作用、抗―アトポーシス作用、エネルギー代謝の促進作用等が認められている。モデル動物を用いた試験、臨床研究等が広範囲に展開されている。この様に多くの既存薬が標的分子に限って作用するのと比べて水素はそれらとは違って、優れた効果とともに副作用がないことから多くの疾患に対して医療応用への可能性と期待が高まっている。

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10.2.7 分子水素は新たな抗酸化剤で、ミトコンドリア病の改善に有効

学術雑誌名:Biochem. Biophys.Acta(2011), doi:10.1016/j.bbagen. 2011.05.006 表題: Molecular hydrogen is a novel antioxidant to efficiently reduce oxidative stress with potential for improvement of mitochondrial diseases(訳:分子水素は新たな抗酸化剤として効率よく酸化ストレスを減少し、ミトコンドリア病の改善能力を有する。) 著者:S. Ohta (日本医大) 概要:ミトコンドリアは酸化ストレスの主要源である。急性の酸化ストレスは組織障害を招きそれが続くと多くの疾患、がん、老化などの引き金となる。しかしながら、これを制御する適切な抗酸化剤は知られていなかったが著者らは分子水素が効率的な抗酸化剤として医療応用できる可能性を報告してきた。本報では著者らが初めて分子水素の機能をNature Medicineに発表して以来38を超える疾患に対して予防、治療、臨床研究が多くの学術誌に報告されて来ておりこれらの文献について最近の進歩を概括する。 水素の摂取法は水素水飲水、水素ガス吸引、水素水含有生理食塩水の注射、入浴、目への点眼等その利用性は多岐にわたっている。水素水は酸化ストレスのみならず抗炎症、抗アレルギー作用等が報告されている。予備的な臨床試験ではミトコンドリア病の病態改善が認められた。このように分子水素は予防医療、治療の両面において有用な抗酸化時としての機能がわかってきたが今後さらに分子レベルでの研究によって少量の水素がなぜ有効かという点の解明が期待される。

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10.1.10 水素水の飲水によって肝臓の酸化—還元に関連する遺伝子レベルに変化

学術雑誌名:Biosci. Biotechnol Biochem., 2011; 75(4) 774-6 表題:Hepatic oxidoreduction-related genes are upregulated by administration of hydrogen-saturated drinking water(肝臓の酸化還元関連遺伝子が水素飽和水の飲水によって上昇する) 著者:Y. Nakai et al(東大・農) 概要:ラットを用いて肝臓の遺伝子発現に対する分子水素(H2)飽和水の飲水の影響を検討した。DNA マイクロアレイ法により分析した結果、4週間の飲水で548の遺伝子が増幅され、695の遺伝子が減少した。解析の結果、hydroxymethylglutaryl Co A reductase を含む酸化還元—関連タンパク質の遺伝子が有意に増幅されていた。

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10.2.6 分子水素の進化:臨床的に重要な特筆すべき治療法(総説)

学術雑誌名:Med.Gas. Res. 2013, 3:10 表題:The evolution of molecular hydrogen: A noteworthy potential therapy with clinical significance(訳:分子水素の進化:臨床的にも重要な水素の注目すべき治療法) 著者:B. J. Dixson (Loma Linda 大、USA) 概要:分子水素の研究はここ数年画期的な変化、進歩を遂げている。水素は細胞レベルで作用する点から極めてユニークであり、水素は脳関門を通り、ミトコンドリア、さらには細胞核移行することができる。その結果、細胞に対して抗酸化作用、抗—アポトーシス作用、細胞保護作用等の優れた作用を示す。また、水素はガス、水溶液、生理食塩水溶液としても使用できるという多くの利点がある。副作用はほとんどなくすぐれた医療用ガスとして心臓や、脳血管疾患、呼吸器疾患等多くの疾患に適用できる理想的な素材である。このように現時点で欠点は見当たらないがさらなる研究も必要であろう。 本総説では多くの文献を総括的に徹底的に調べて解析し、新たな治療法としての水素の有用性を概説する。

カテゴリー: 10.2.医療応用に関する総説, Med. Gas Res |

10.3.1 水素豊富水摂取後のヒトでの分子水素の消費量

学術雑誌名:Oxygen Transport to Tissue XXXIII, Advances in Experimental Medicine and Biology 737, p245, eds. by M.Walf et al. 表題: Estimation of Molecular Hydrogen Consumption in the Human Whole Body After the Ingetion of Hydrogen-rich Water (訳:水素豊富水摂取後のヒト全身での分子水素の消費量の推定) 著者:A. Shimouchi (国立脳心血管研究所、中部大) 概要:市販のアルミパウチ入り水素豊富水を用いて飲水後の分子水素の吸収性と体内消費について調べた。23~55歳の男性5人、女性2人のボランティアに500mlの水素水を摂取させて呼気中に出てくる分子水素を測定した。前報告において経口摂取した分子水素は大部分が呼気中に排泄され、皮膚からの発散、大腸中の腸内細菌の産生する水素はこの測定には影響がないことを確認している。測定誤差を最小化するために飲水はアルミパウチから直接1分以内に飲んだ。呼気中の分子水素の濃度は10分でピークに達し、60分で摂取前の値に戻った。得られた結果から、飲水によって摂取された分子水素は約59%が呼気中に排泄され、残りの約41%体内で消費されることが分かった。体内での消費は生体内の活性酸素、とりわけヒドロキシラディカルの量と相関することが推察された。

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10.1.9 水素の生理作用の化学反応機構に関する仮説

学術雑誌名:Med. Gas Res.,2011,2:17 doi:10.1186/2045-9912-2-17 表題:A hypothesis on chemical mechanism of the effect of hydrogen(水素の生理的効果の化学反応機構に関する仮説) 著者:S. Penghui et al(甘粛農業大、中国) 概要:分子水素(H2)は抗酸化ストレス、抗炎症やその他の防御効果が多くの生理機能など報告されている。大沢らによってH2はOH・ラジカルを選択的に直接除去する作用があることが報告されているが最近の新たな試験結果の中にはこの作用だけでは説明できないものも報告されてきた。本報ではH2がリガンド(配位子)として金属と結合するという仮説によって広範な生物反応が説明できることを提唱する。H2はM-H2反応によって特定の金属たんぱく質を制御し、その結果活性酸素(ROS)の代謝と情報伝達に影響を与える。金属たんぱく質はH2の標的分子の一つであり、金属イオンはH2分子に対する適切な結合サイトとして機能していると考えられる。当該仮説は水素分子の機能を明らかにする新たな指針を示した。

カテゴリー: 10.1.作用メカニズムに関する研究 |

10.1.7分子水素は酸化ストレス抑制と合わせて新たな機作により軟骨細胞を守る

学術雑誌名:Medical Gas Research,2011,1:18 表題:Molecular hydrogen protects chondrocytes from oxidative stress and indirectly alters gene expressions through reducing peroxynitrite derived from nitric oxide 著者:T. Hanaoka et al(日本医科大学) 概要:分子水素(H2)は酸化ストレス、炎症、アレルギー等の動物モデル及びヒトの臨床において多彩な防御機能があることが報告されている。本研究では分子水素(H2)の抗酸化作用に加えて新たな生理機能を解明する目的で水素がNO・(酸化窒素)からできるONOO-の減少を介して間接的に遺伝子発現制御に関わっている可能性を検討した。

カテゴリー: 10. 水素の医療応用, 10.1.作用メカニズムに関する研究, Medical Gas Research, 抗酸化作用, 日本医科大学, 水素, 炎症, 研究機関 |

10.1.6 水素の新たな標的分子:水素(H2)は情報伝達系の分子の作用を調整して新たな作用を発現する

学術雑誌名:Biochem. Biophys. Res. Comm., 411(2011) 143-149 表題:Molecular hydrogen inhibits lipopolysaccaride/interferon γ-induced nitric oxide production through modulation of signal transduction in macrophages(訳:分子水素はマクロファージの情報伝達系を調整する事によってLPS/インターフェロンγで誘導される一酸化窒素(NO)産生を阻害) 著者:T.Itoh et al.(岐阜国際バイオ研究所、近畿大学、中部大学、名古屋大学他) 概要:これまで分子水素(H2)が多くの疾患に有用である事が報告されている。その作用機作としては多くは酸化ストレスの抑制作用として説明されてきたがそれだけでは説明できない事例も認められている。

カテゴリー: 10. 水素の医療応用, 10.1.作用メカニズムに関する研究, BIochem.Biophys.Res.Comm., 中部大学, 名古屋大学医学部, 岐阜国際バイオテク研究所, 抑制作用, 水素, 研究機関, 近畿大学 |

10.2.5 水素医学の最近の進歩

学術雑誌名:Current. Pharm. Design, 2011, 17, in press 表題:Recent Progress Toward Hydrogen Medicine: Potential of Molecular Hydrogen for Preventive and Therapeutic Application(訳:水素医学の最近の進歩:分子水素の予防及び治療応用の将来性) 著者:S. Ohta (日本医科大学) 概要:持続的な酸化ストレスは多くの生活習慣病や、ガン、老化の主因の一つである。また、急性の酸化ストレスは組織に重篤な障害を与える。酸化障害は臨床的にも重要であるにもかかわらず抗酸化剤の臨床応用は限られていた。 筆者らは分子水素(H2)が新たな抗酸化剤として予防、治療用途として有用である事を始めて提唱した(Osawa et al., Nature Med., 2007: 13,688-94)。

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