4.1.5 水素豊富食塩水は腎臓の虚血―再環流障害を予防する

学術雑誌名:J. Anesth.18 May 2010  doi: 10.1007/s00540-010-0942-1
表題:Hydrogen-rich saline solution attenuates renal ischemia-reperfusion injury(水素豊富水は腎臓の虚血―再環流障害を改善する)

著者:C. Shingu et al(大分医大)

目的:急性腎障害の重要な原因である虚血―再環流障害は腎移植を含む種々の手術、腎動脈の血行再建術、腎の部分摘出、副腎動脈瘤等において避けることができない要因である。分子水素(H2)は細胞傷害性の活性酸素を抑制する作用が知られている。ラットを用いて水素水投与による腎臓の虚血―再環流障害発症抑制を検討する。

方法:水素ガス吹き込み法によって作成した水素豊富水を静脈投与により腎臓の虚血―再環流後24時間与えて、対象に用いた水素を含まない精製水と比較した。電子顕微鏡による病理学的な評価並びに血清中の8-OHdG(活性酸素による産物)の測定を実施した。

結果:通常水を与えた群では虚血―再環流によって反対側の血漿単核球の化学誘因性protein-1、メチルグリオキサルや血中尿素体窒素等が有意に上昇し、病理解析においても糸球体吸着、心臓の線維化、ED-1陽性細胞、ニトロチロシン染色等が腎、心臓で認められた。一方、水素水投与群ではこれらの変化は有意に抑制された。これらの結果から、電気分解によって精製する水素水を自由摂取させることにより、慢性腎臓病モデルラットの虚血―再環流による、腎・心臓障害が予防されることが示唆された。

カテゴリー: 4.1  腎炎、腎症   パーマリンク

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