2.2.5 水素水のパーキンソン病に対するパイロット臨床試験:無作為化平行群間試験

学術雑誌名:Movement Disorders, Vol. 28, No.6, 836(2013).

表題:Pilot Study of H2 Therapy in Parkinson’s Disease: A randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial(パーキンソン病に対する水素療法のパイロット試験)

著者:A.Yoritake et al(順天堂大医学部)

概要:パーキンソン病の進行に酸化ストレスが関与していることが知られており、これまでに各種のモデル動物試験において水素飲水が病状の悪化を抑制することが多く報告されている。本試験においてはL-dopa治療を受けている男女患者(平均年齢:約62歳)17人を対象に水素水飲水群9人(溶存水素濃度:0.8mM,1000ml/日)とプラセボ群8人にわけて無作為化並行群間試験法により試験を実施した。臨床評価はUPDRSスコア法に依った。患者は少人数のパイロット試験ではあったがスコアの減少度において両者間には有意な差が認められ水素飲水が動物実験で得られた結果と同じように病状の進行を抑制する有効な作用があることが認められた。

カテゴリー: 2. 神経変性疾患、筋疾患: 認知症、パーキンソン病、進行性筋ジストロフィー他, 2.2 パーキンソン病 |

12.7 水素分子は傷害を受けたヒト精子の運動性を刺激する

学術雑誌名:Med. Gas Res.,(2015) 5:2 DOI 10.1186/s 13618-0023-x

表題:Stimulation of human damaged sperm motility with hydrogen molecule(水素分子は傷害を受けたヒト精子の運動性を刺激する)

著者:K. Nakata et al(東京都老人研他)

概要:精子の運動性は受精率にとって重要である。低運動性は異常な精子形成、酸化ストレス、細胞内ATPの欠乏等によって起こる。ヒト患者の射精によって採取した精子を用いて水素添加培地を用いて計数用容器中での精子の運動性、運動速度、ミトコンドリアの染色性等を調べた。その結果、水素分子によって処理後の精子の運動性は有意に改善されたが遊泳速度には影響はなかった。このような効果は窒素ガスでは認められなかった。患者精子の凍結融解後の低運動性は水素によって改善され、水素が低運動性精子の受精不全の改善に有為な手段として期待されることが分かった。

カテゴリー: 12. その他の酸化ストレスに関連する疾患:延命作用、腸内細菌、視聴障害、精子機能等 |

1.3.2 水素豊富水に白金ナノコロイドを加えると相乗的に活性酸素除去作用があり血液の流動性を改善する。

学術雑誌名 J. Nanoscience and Nanotecnol., Vol.12.(5), 4019(2012)

表題Colloidal Platinum in Hydrogen-rich Water Exibits Radical-Scavenging Activity and Improves Blood Fluidity

著者 S.Kato etal(広島県立大他)

概要 通常水と水素豊富水にそれぞれ白金ナノコロイドを加え水素豊富水活性酸素除去効果に対して白金ナノコロイドの相乗効果があるか否かを検討した。試験は、馬の血液に活性酸素を発生する薬剤を加え、血液が細孔を通過する時間を調べその速度を比較した。その結果水素豊富水、白金ナノコロイドともに血液の流動性を促進したがその効果は水素豊富水単独よりも白金ナノコロイドを加えた方がその作用が強くなった。活性酸素による赤血球膜の形態変化が起こり血液の流れが悪くなるが水素豊富水、白金ナノコロイドともに赤血球の形態的変化を軽減し、血液の流動性を改善することが示唆された。この改善作用は水素豊富水単独よりも、水素水に白金ナノコロイドを加えた方がより効果があり、両者には相乗作用があることが分かった。

カテゴリー: 1.3. 動脈硬化 |

2.3.10 水素豊富水は一酸化炭素中毒ラットの免疫学的作用による急性脳障害を軽減

学術雑誌名:Neurolog. Res. 2012, vol. 34, no.10, 1007

表題:Hydrogen rich saline reduces immune-mediated brain injury in rats with acute carbon monoxide poisoning.(水素豊富水投与により免疫学的機作で起こるラットの一酸化炭素中毒による脳障害が軽減される)

著者:Wang, W. et al.(第4軍医大、中国)

概要:SD系ラットを一酸化炭素暴露すると免疫学的作用を介して急性の脳神経障害が発症する。神経、小グリア細胞、ミエリン鞘の変性が観察され、また、マクロファージ浸潤や免疫に関連するcytokainのMP-1-α、ICAM-1が変動し、あわせてミエリンタンパク(MBP)が変化する。本症に対する水素豊富水の投与効果を検討した。神経組織の変性を組織病理学的および免疫組織学的検査、抗酸化機能を抗酸化酵素SODおよび血清中マロンジアルデヒドの測定により評価した。水素豊富水は生理食塩水にH2ガスを吹き込んで作成し、腹腔内投与した。水素豊富水投与により上記諸測定値は有意に改善され、分子水素がラットの一酸化炭素暴露によって生じる免疫学的作用を介した脳神経障害を軽減することが分かった。

カテゴリー: 2. 神経変性疾患、筋疾患: 認知症、パーキンソン病、進行性筋ジストロフィー他, 2.3 その他の神経疾患 |

2.3.9 分子水素はマウスの神経性疼痛を軽減する

学術雑誌名:Plos One,June 2014,Vol. 9, I ssue 6, e100352(電子版)

表題:Molecular hydrogen Attenuate Neuropathic Pain in Mice.(分子水素はマウスの神経性疼痛を軽減する)

著者:Kawaguchi M. et al.(防衛医大)

概要:神経性疼痛は難治性であり早急に新たな治療法の開発が望まれている。近年、酸化ストレスの過剰生産がこの疾患の病因のキーとなっていることが明らかになってきた。しかしながら、不適切な抗酸化物質を腹腔内やくも膜下に継続して投与することは実用上困難である。本研究ではマウスの坐骨神経結紮によって起こる疼痛モデルを用いて飽和レベルの水素水を3週間自由に飲水させることによって分子水素水の神経性疼痛に対する効果を検討した。機械的な異痛および痛覚過敏を指標として測定した結果両指標は明らかに軽減された。結紮初期(0~4日)に水素水を与えた場合は両指標とも改善されたが維持期(4~21日)のみに与えた場合痛覚過敏は改善されたが異痛には効果はなかった。また、免疫学的病理解析において酸化ストレスマーカーは低下した。これらの結果から水素水投与は臨床的にも神経性疼痛に対する改善作用が期待されることが示唆された。

カテゴリー: 2.3 その他の神経疾患 |

15.3 水素豊富水飲水により家ダニ成分で誘導したアトピー性皮膚炎が改善される

学術雑誌名: Evidence-based Complimentary and Alternative Medicine 
Vol.2013(2013), Article ID 538673, 5 pages

表題:The Drinking effect of Hydrogen water on Atopic Dermatitis Induced by Dermatophagoides farinae Allergenin NC/Nga Mice  
(水素水飲水はハウスダストのアレルゲンである家ダニ成分で誘導したマウスのアトピー性皮膚炎に有効である)

著者:R.M.C.Ignacio et al.(Yonsei Univ., Korea)

概要:電気分解で作成した水素水は低酸化還元電位(ORP)と高い溶存水素水素濃度を有し、抗酸化作用と抗炎症性があることが示された。この水素水を精製水を対照として家ダニのアレルゲンで誘導したアトピー性皮膚炎マウスに対する効果を比較した。25日間投与した結果、血清中の炎症性サイトカインや免疫細胞のTh1とTh2のアレルギー・炎症に関連したサイトカインに有意な差が認められ皮膚炎の重篤度と相関が認められた。水素水群では有意な低下が確認された。これらの結果は水素水飲水がTh1とTh2細胞反応を改善することを示唆している。本報は水素水がアトピー性皮膚炎に有用であることを示した最初の論文である。

カテゴリー: 15. 皮膚、スキンケア |

10.2.8 予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性

学術雑誌名:Pharmacology&Therapeutics(2014),http://dx.doi.org/10.1016/j.pharmathera.2014.04.006

表題:Molecular hydrogen as a preventive and therapeutic medical gas : initiation, development and potential of hydrogen medicine(訳:予防及び治療用医療ガスとしての分子水素:水素医学の始まり、発展、そしてその有用性)

著者:S. Ohta (日本医大)

概要:分子水素(H2)の医療応用研究の第一人者である著者が当該分野の研究、応用の最新状況についてその歴史と現状について紹介している。分子水素は体内では不活性な分子と考えられていたが著者らの研究により初めて生体内で・OHのような強い活性酸素と反応してその傷害作用を軽減することが発見され、水素の予防医学、治療応用の研究が近年急速に発展してきた。水素は既存の抗酸化剤に比べて極めて特徴的な利点を有している。すなわち、水素は速やかに組織や細胞に入り、正常な酸化還元反応に影響することなく傷害性の活性酸素種を還元するのでほとんど副作用がない。さらには、ガスとして吸引、水素水として飲水、水素水―生理食塩水の注射、水素温浴、目の点眼剤等その投与法が広く優れた利点がある。また、活性酸素種と直接反応するとともに遺伝子発現への作用を介する間接的な作用も報告されている。遺伝子制御を介して抗炎症作用、抗―アトポーシス作用、エネルギー代謝の促進作用等が認められている。モデル動物を用いた試験、臨床研究等が広範囲に展開されている。この様に多くの既存薬が標的分子に限って作用するのと比べて水素はそれらとは違って、優れた効果とともに副作用がないことから多くの疾患に対して医療応用への可能性と期待が高まっている。

カテゴリー: 10.2.医療応用に関する総説, Pharmacology&Therapeutics |

10.2.7 分子水素は新たな抗酸化剤で、ミトコンドリア病の改善に有効

学術雑誌名:Biochem. Biophys.Acta(2011), doi:10.1016/j.bbagen. 2011.05.006

表題: Molecular hydrogen is a novel antioxidant to efficiently reduce oxidative stress with potential for improvement of mitochondrial diseases(訳:分子水素は新たな抗酸化剤として効率よく酸化ストレスを減少し、ミトコンドリア病の改善能力を有する。)

著者:S. Ohta (日本医大)

概要:ミトコンドリアは酸化ストレスの主要源である。急性の酸化ストレスは組織障害を招きそれが続くと多くの疾患、がん、老化などの引き金となる。しかしながら、これを制御する適切な抗酸化剤は知られていなかったが著者らは分子水素が効率的な抗酸化剤として医療応用できる可能性を報告してきた。本報では著者らが初めて分子水素の機能をNature Medicineに発表して以来38を超える疾患に対して予防、治療、臨床研究が多くの学術誌に報告されて来ておりこれらの文献について最近の進歩を概括する。
水素の摂取法は水素水飲水、水素ガス吸引、水素水含有生理食塩水の注射、入浴、目への点眼等その利用性は多岐にわたっている。水素水は酸化ストレスのみならず抗炎症、抗アレルギー作用等が報告されている。予備的な臨床試験ではミトコンドリア病の病態改善が認められた。このように分子水素は予防医療、治療の両面において有用な抗酸化時としての機能がわかってきたが今後さらに分子レベルでの研究によって少量の水素がなぜ有効かという点の解明が期待される。

カテゴリー: 10.2.医療応用に関する総説, BIochem.Biophys.Res.Comm. |

2.1.4 水素豊富水は敗血症ラットの酸化ストレス、認知能、生存率を回復する

学術雑誌名:J. Surg. Res., 178(2012) 390-400

表題:Hydrogen-rich saline reverses oxidative stress, cognitive impairment, and mortality in rats submitted to sepsis by cecal ligation and puncture(水素豊富水は盲腸結紮および穿刺で起こる敗血症ラットの酸化ストレス、認知能、および生存率を回復する)

著者:Zhou, J. et al (Luzhou医科大他)

概要:敗血症は高い罹患率と致死率を伴い、生存者は認知機能低下を呈する。本報では水素豊富水の脳における酸化ストレス、認知機能異常、および生存率に対する効果をラット敗血症モデルを用いて検討した。敗血症は盲腸の結紮と穿刺によって作成し、生理食塩水または水素豊富生理食塩水を腹腔投与によって与え、その効果を比較した。活性酸素生成物、生存率、および海馬におけるSOD生成を測定した。認知能はモリス水迷路法によって判定した。さらに、アポトーシス能は関連酵素Caspase-3活性で調べた。海馬の病理組織的変化についてはHE染色法等によって検討した。
これらの結果から、水素豊富生理食塩水投与により敗血症で誘導された脳の酸化ストレスは抑制されて記憶機能低下を改善し生存率も上昇することが明らかになった。

カテゴリー: 2.1 認知症・アルツハイマー病, J. Surg. Res. |

1.4.6 水素豊富電解水は塩分感受性ラットの老化による心臓・腎臓傷害を改善

学術雑誌名:Med. Gas Res. 2013, 3:26

表題:Amerioration of cardio-renal injury with aging in dahal salt-sennsitive
Rats by H2-enriched electroryzed water(訳:水素豊富電解水は塩分感受性ラットの老化による心臓・腎臓傷害を改善する)

著者:Wan-Jun Zha et al(東北大医、日本トリム)

概要:これまでを水素水投与により腎障害が抑制されることがわかってきている。Dahl-塩分感受性のラットは老化により血圧上昇を伴った腎および心臓の障害を発症する。本報では高濃度水素水を老化経過に沿って長期投与してその効果を検討した。試験は①通常水、②電解水素豊富水、③水素を脱気した電解水の3群に分けて48週間投与して比較検討した。3群の間に血圧変動に対する効果には差異がなかったが心臓、腎臓の機能に関した病態の進行は②電解水素水群に明らかな改善が認められた。酸化ストレスと炎症に起因する病態変化を改善したと推察された。

カテゴリー: 1.4. 高脂血症・心筋梗塞・脳梗塞・老化, Med. Gas Res |